やはり俺が選んだライトノベルは間違っていない

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』というライトノベルがありまして。
僕はこの小説が大好きなのであります。

あれは何年前でしょうか。
しばらくライトノベルというジャンルから離れていて、
「久しぶりに何か読んでみるかなぁ」と色々物色していたところ、
平積みされていた、出たばかりの1巻を発見。

「ん、何だろう何か気になる……」と手にしてからというもの、
もうドップリとお嵌り遊ばされたわけであります。


今や押しも押されぬトップセールスになっているこのシリーズの魅力を今更語るのも、
まあ機を逸しすぎというか、逸しすぎてシャドウと共に魔大陸崩壊を味わいそうではありますが、
8巻を読み終えた今、やはり熱いものが込み上げて来て、書かずにはいられない衝動に駆り立てられているわけです。


このシリーズの何が素晴らしいのかと言うと、
勿論キャラクタの魅力や、穿った視点からの考察の面白さ、あるいはちょくちょく挟まれる小ネタ等々枚挙に暇がありませんが、
一点挙げるとするならば、実に絶妙な、ややもすると危ういとも思えるバランスで物語が成立している、という点でしょう。


主人公が世間の悪評を一手に引き受けることで物事を解決する、という、
本来ならば不快で顔を顰めてしまいそうな行為が、実に奇妙なカタルシスの与えてくれるのですな。


これは、本当に難しいことにチャレンジしている!


僕はこのシリーズの5巻を読んだ時、その倒錯したカタルシスに驚愕したものです。
「なんじゃこりゃ!」と。


作者であらせられる渡航さんも、その巻のあとがきで「こういうお話だったのか」と気が付いた、
と言う風なことを書かれていらっしゃいますが、
いはやは、本当にスゴイ。

こんな暗澹とした気持ちになる物語が、エンターテインメントとして成立し得るとは。


これはある種、ホラー的と言いますか、スラッシャームービー的と言いますか、
あるいは災害映画の大破壊シーンを観て興奮する背徳的な気持ちと言いますか……、

「こんな事があって良い筈がない。でもフィクションだからこそ、観たい!」という、
人間の持つ『後ろ暗さ』の快感を味わわせてくれる、新たな境地を体現していると言っても過言では無いのではないでしょうか。

不幸になっていく主人公を、「俺だけはお前の事が分かっているからな!」とひっそりと応援してやりたくなるこの気持ち。


これがレーベル市場最高のヒットとなっていると言うのだから、
ライトノベルというジャンルは本当に底が知れませんし、渡航さんや編集者の方々、
あるいは読み手である読者層の感受性の鋭さには舌を巻くと共に、
今後のライトノベルの躍進に対して、実に希望が持てる素晴らしい現象であると思うわけであります。


自分が早々に目をつけたライトノベルがヒットをするという現象は、
実際のところちょっと寂しく、
「俺だけのアイツだったのに……今はもう、みんなのアイツなのか……」
という、新体操で高評価された朝倉南に対するタッちゃん的な感慨を抱かないでもないのですが、
今後も新刊に期待できるという点を考えれば、これは喜ばしい限りですね。


と言うわけで、『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』という作品は、
今後も絶大なる期待と共に、「俺を後ろ暗い気持ちにさせてくれ!」と、
若干おかしなテンションで見守っていきたい作品なのであります。


面白いライトノベルは、やはり面白い。