本のサナギ賞

先日、ディスカヴァー・トゥエンティワン社の担当の方から、お電話を頂いた。


「大賞ではないですが……おめでとうございます!」


そう言われた気がする。
正直、突然のことで何を言われたのか、よく覚えていないのだ。
ただひたすら「はぁ」とか「へぇ」とか、間が抜けた返答をしていた気がする。


確かに私は、「本のサナギ賞」なる新進気鋭の文学賞に、拙文を応募していた。
そして、それが一次選考を突破していたことも知っていた。


そんな「本のサナギ賞」の担当の方から、連絡が有ったのだ。
あったのだが、


(……はて、大賞以外の何かしらの賞があっただろうか?)


電話を切ったあと、いそいそとインターネットで検索をしてみても、
やはり大賞としか表記がない。


これは、何だろう。何がめでたかったのだろう。

電話の際、担当の方に何かしら尋ねれば良かったのだろうけれど、
産まれてこの方「度胸」というステータスにポイントを割り振っては居なかったため、
全く聞くことが出来なかった。


しかし、何か自分の身にめでたいことが起こったのは、間違いがない。
という事は、これは喜んで良いことなのだ!


良いこと……なのだよな。
とりあえず、拳をギュッと握る程度に留めて置いた。



そして、来る12月19日。
帝国ホテルにて授賞パーティが行われた。



頂いた賞は「優秀賞」。


読んで字の如し、優れていて、秀でている賞。
これはすごい。凄くありがたい。


正直に言えば、パーティに参加したは良いものの、

『あっ、本当に来たんですね。えー、まあ、その辺にご飯あるんでテキト−に食べてってください』

ってな感じで終わるかも知れないな……などと、僅かながらに思っていた部分があったのだ。
そして、次から次へと我を忘れて食材を皿に盛り付けている私の背中に

『あ、参加費的なものを頂いちゃっていいですか? えーと2万円』

なんて感じになるかもしれないとも思っていた。



今思えば、失礼甚だしい妄想だ。
産まれ持ってのネガティブ思考がぐるぐると大回転し過ぎていた。



どうやら、私は小説家になるらしい。