『捜査官X』の検診

知り合いのスタントマンに誘われ、新宿ピカデリーに『捜査官X』を観に行った。
主演はドニー・イェン金城武


これがまあ、面白い映画で!


と言うか、最近観たドニー兄貴が出てる映画で面白くなかったのなんて無い気がするけど。

しかも、タイミングというものはあるもんだなあ、と思ったのが、
なんとまあ悪役としてジミー・ウォング御大も出演されていること。


どんなタイミングかと言えば、
つい先日ジミー・ウォング主演映画『片腕カンフー対空とぶギロチン』を見たばっかりだったのだ。


この『片腕カンフー対空とぶギロチン』は実におかしな映画で、
アクションも「おや?」って部分もあるし、効果音もヘンテコだし、効果音とアクションがあってない感じだったりするのだけど、

そのヘンテコ感が実に面白い作品で。


登場する人々も、片腕ドラゴン(なんかお腹に片手を入れている「ような気がする」)のジミー・ウォングをはじめ、
弟子の敵を討とうとする盲目のギロチン使い(盲目であるが故に片腕の奴は皆殺そうとする無茶な人)、

試合前の踊り(ワイクルー)を踊りだすとどこからか音楽が鳴り始めるムエタイ選手、
更にはダルシムの元となった手が伸びるインド人拳法家とか、

もうヘンテコてんこ盛り。
(一説によればストリートファイターⅡはこのてんこ盛り感を元にしたとか。なるほど。)


このおかしな感じはワンス・アポン・ア・タイム・インチャイナにおける獅子舞のシーンを彷彿とさせ、
自分の香港アクション好きの原点を見た気がした。


『片腕カンフー対空とぶギロチン』で特に好きなシーンは、無刀が流派であるはずの日本人侍が何故かトンファーを使い、更にはそのトンファーが仕込み刀になって相手を刺し殺すという卑怯ぶりを見た片腕ドラゴンが一言、

「参考にしよう」

とつぶやくところ。
参考にするのかよ! カッコイイな!


とまあ、そんなタイミングだったから、ドニー・イェンジミー・ウォングが戦うというだけで、見に行く価値はありすぎるほどだった。


話は少し逸れるが、最近人生何度目かになる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』(主演:ジェット・リードニー・イェン)も同時に見終えたところで、

この時のドニーは孫文を追う側の人間としてジェット・リー演ずる洪家拳の達人ウォン・フェイフォンと戦うけれど、
その後『孫文の義士団』では孫文を護る側に回り、
『イップマン 葉門』においては洪家拳の達人であるサモハン・キンポーの遺志を継いでいくんだなあ……、
なんて感慨に耽ったりもした。

うーん、どうでもいいね!


閑話休題


『捜査官X』はミステリー色の強いアクション映画で、金城武演ずるシュウがある事件に疑問を持つところからストーリーが大きく進展していく。


その謎解き(?)シーンが実に面白くて、「おいおい金城武、大丈夫なのかその推理……」と訝しみつつも思わず笑ってしまう名場面。

ドニー・イェンが暴力を爆発させる瞬間は、誰もいない映画館だったら「ウッヒョー!」と叫んでしまうかも知れないほどだった。


そして特筆すべきはジミー・ウォングがドニー宅に尋ねてくるクライマックス。

怖い! 超怖い!
子供の頭とか超捻りそう! 捻り殺しそう!
むしろ捻れ!

あのシーンを観れただけでも、1800円分の価値はあった……怖かった。


更にはドニー・イェンが「片腕カンフー」としてジミー・ウォングと相対するなんて、
もう今観ずしていつ観るのかと自分の幸運に感謝するほどだった。


物語のラストとかは、何と言うか、「そうなの?」って感じだったけど、
上記のシーンを観れただけで、そんなの何の問題でもないね。


しかし……『捜査官X』という邦題とエンディングテーマはいかがなものか。

連れだって観に行ったスタントマン曰く、日本では金城武推しだったからピカデリーで公開できたんじゃないかとのこと。

なるほどなあ……同じ新宿とはいえイップマンは武蔵野館だったし、孫文の義士団はシネマスクエアとうきゅう新宿だったものなあ。
『導火線 FLASH POINT』なんかはDVDスルーだった気がするし。

『捜査官X』という邦題も、金城武がメインに据えられていると考えるなら、うーむ、さもありなん、なのか。(ちなみに原題は武侠。意味は分からないけど、日本で言うところの任侠みたいなものかしらね)


客層を見ると奥様方の姿も見受けられて、金城武目当てなのかな? と納得したり。
映画的には結構エグいシーンもあったけれど、奥様達は大丈夫だったのかな。
かなり冒頭でハッとするシーンがあって、隣の奥様が小さく「ギャッ」って悲鳴を上げてて笑っちゃったけど。


あと、日本人ながら武術指導で活躍されている谷垣健治さんも出演されているのも、大きな見どころ!
素敵な悪役ぶりでございました。さらなるご活躍をご期待しております。


だが、エンディングテーマだけは本当に「?」だった。
あんまり上手い歌に聞こえないのはまだしも、
急に「チンコーチンコー」と連続して歌われた時には、笑いをかみ殺すのが大変で……。

いや、これは下品だし、日本人ならではの語彙なわけだから、笑う方が無粋なんだけどもね。


ともあれ、やっぱり面白い映画には違いなく。

ドニー・イェンは相変わらずカンフー映画全体を背負っているかのような気迫のアクションで、
これからもずっとカンフー映画を見続けて行こうと思う気にさせる一本だった。


上映期間は残り少ないけれども、時間があれば是非。DVDが出たらそちらだけでも。


ドニー・イェン、ジャッキーやジェット・リーとまた映画撮らないかなぁ。
小さな劇場だったとしても絶対観に行くから。