色紙

本屋さんに置かれる予定のサイン付きPOPを書かせて貰えることになった。

担当から渡されたのは、25店舗分のリストと25枚の色紙。

恐ろしいことに、一枚の失敗も許されないという状態だ。

(担当は恐らく、私を試そうそしているのだな)
(よかろう、色紙25枚程度、速攻で書き上げてみせよう)

色紙の大きさは、通常の四分の一ほどの小さなサイズ。
余計なことを書く隙間はない。
どこに何を書くべきか、頭の中に図案をしっかりとシミュレートする。

上部に店名。
中央にサイン。
下部に一言。
隙間になにか絵などを加えても良いかもしれない。
色なんかもふんだんに使っちゃえば、目を引くだろう。

よし、と筆を走らせる。



間違える。

早速間違える。

『店』の漢字の”まだれ”の部分で、上にちょこんとある短な縦棒の中央から、何故か右へ伸びる横棒を書いてしまった。


「お……おおお……うあ……」

声にならぬ声を上げること数十秒。
どうにか冷静さを取り戻し、

「このような小さな色紙は、どこに売っているんですか…」

と、担当に連絡。
担当は丁寧に教えてくれたが、その行間には(やっぱり出来ませんでしたか)と書かれていた気がする。


涙を堪えながら、色紙を貪るように買い漁り、
再び机に向かい、どうにかこうにか書き上げた。



書店様、下手くそな色紙ではありますが、宜しくお願いします。