ピコピコ少年。
ぶらりと本屋に寄ったら、「ピコピコ少年」なる漫画が陳列してあった。
ピコピコ少年、ピコピコ少年TURBO、ピコピコ少年SUPERと三冊並んでいる。
(なかなか郷愁を誘うカバーイラストだぞ。そしてこのTURBOの文字、これはストリートファイターのアレじゃないか)
この段階で「ニヤリ」としてしまった僕は、すでにこの作者の術中に嵌ってしまっている。
作者名は押切蓮介……あ、ハイスコアガールの人だ。
(そうか。色々あったらしいものな)
(ハイスコアガールには随分楽しませてもらったし、ここは僕が支えねばな……)
ファン心理とでも呼ぶのか、よく分からない感情に後押しされ、三冊同時に購入。
内容は、ゲーム大好き人間であった作者が、幼少期から現在に至るまで「ゲーム」と共に生きてきた過程を自虐的に描いており、
ユーモラスで、しかし時に物悲しく、望郷の念を呼び起こす仕上がりになっていた。
読めば読むほど懐かしい気持ちに包まれ、同時に、この作者押切蓮介先生への同調度が高まっていく。
何よりも、私と押切先生は1979年生まれの同年代であったことが大きいだろう。
押切先生ほどではないが、私もやはりゲーム大好き少年であり、
家庭用ゲーム機はもとより、ゲームセンターにも良く出向き、様々な筐体の後方で「ベガ立ち」をしていた。
違う点と言えば、ゲーセンではゲームをするより見る方が好きな、ベガ立ち勢=ベガ立ち少年であったのだ。
そして、作者がゲーム好きから声優好きへと流れていく様を見て、
その度合いは及ばぬとは言え、まるで己のことを描かれている様で……、
ちょっと気持ち悪くなる。
ツインビーPARADISEとか、覇王塾とか、クリスクロスとか、
当時の僕が大好きだったもの、僕だけのものが、違う人の手で表現されている。
同属。
僕よりも遥か高み(深み)に居るとは言え、同じ時代を、似たような感性で生きている人が居た。
運動も勉強も出来ず、ただひたすらゲームや漫画、アニメに埋没していた僕。
おかげで女子にはモテず、友人も少なく、あまつさえ女の子に泣かされたりして、
その鬱憤をゲームで、“すがた”の爆裂パンチを壁際で連発し、りゅういちりゅうじをハメ殺すことで発散していたあの頃。
敵に“ごだい”がいて、真ん中に木の棒があると見るや、真っ先に場外へ投げ捨てることで発散していたあの頃。
障害物競走にて、いつまでたってもバネを超えられずタイムオーバーになる“わしお”を見て、一人ほくそ笑んでいたあの頃。
あの頃に、僕の側にこんな「ピコピコ少年」が居たら、どうだっただろうか。
仲良くなれただろうか。
それとも、連合の取り合いで勝利した側が、ひたすら壁に“にんげんぎょらい”をやり続け、喧嘩でもしていただろうか。
それは分からない。
ただ一つ言える事は、
「ピコピコ少年」はぷよぷよ対決でクラスメイトの女子に勝利したが、
僕は三十路に入ったあたりで、ぷよぷよ対決で知人の妹に完敗した。
僕は「ロースコアボーイ」だったのだ。
でも、今でもゲームをやっている。スコアはあんまり関係ないのである。